水中メガネ

1999年の夏。

FM802から「水中メガネ」という歌が流れてきた。

透明感がある女性の声で、ええ歌や…と感動した。

 

当時は調べる手段が少なく、その歌が流れるたびに少しずつ情報を集め、作曲が草野マサムネさんだと知った。私はスピッツが好きだったから、必然的なものなのか、と納得したものである。

 

そのころは夏休みで、中学3年で、特別に孤独だった。

2000年は無事に迎えられるのか(今では笑える話なのだが)、高校受験は上手くいくだろうか、それらに思春期特有の苦しさが混ざって、毎日絶望的な気分だった。ドロドロした暑苦しい日々を水中メガネを聴きながらやり過ごしていた。その歌声の主は、当時非公開で、誰なんだろう…と何度も考え、いつか草野マサムネさんの声でも聞いてみたいな、と馳せていた。

 

それから高校・大学受験、就職、引越し、結婚、引越、子どもが産まれて、また引越し。朝日が昇るように目まぐるしく15年が過ぎていった。

30才なり、ふとした瞬間に、草野マサムネさんが水中メガネをカバーする事を知った。

「あらまぁ、生きてて良かった」と拍子抜けした。

 

あの不安定な季節をすっかり忘れていた。

生きていても良い事無いんじゃないか、大人になっても辛いことばっかりじゃないのか、いつも不安だった。その時の芋臭い自分に教えてあげたい出来事だった。

 

水中メガネ、私の好きな歌の話でした。

 

ニラチュール(30代、平凡)