毛虫のトラウマ
20年前の春、私は小学3年頃だったと思う。
ある日の夜、ご近所さん宅の一本桜を見に外へ出た。
徒歩10秒、滞在時間1分ほど。綺麗な夜桜だった。
そのまま布団に入り、起きたら首にチクチクした違和感があった。
そして敷き布団の枕下が、なぜか黄色になっていた。
母親に相談しながら、パジャマを脱いでいたら首のタグの辺りに、ペッタンコの死んだ毛虫が付いていたのである。夜桜から毛虫が偶然落ちて、私の首元に入り込んでいたようだ。
それ以来 毛虫を見ると首元がゾクッとするようになった。桜は相変わらず綺麗だけれど、その下を歩くのは今でも苦手である。
完全なるトラウマ、ささやかなPTSDである。
この9月、家の近くの桜の木に毛虫が大量発生した。
はじめは気づかなかったが、その木の下を通った時に「あれ?今年は葉が少ないなぁ」と目を凝らしたら、葉が無くなるほど、たくさんの毛虫がいた。
飛び上がるほどパニックになったが、次第に慣れ、木の下を通る時に注意すれば、なんとか凌げるようになった。
問題はここからだった。
食べる葉が無くなった毛虫達が自宅の紫陽花の木に移住し、駐車場にある苔が好きらしく、彼らがそこで大量に昼寝するようになった。
さすがに耐えられそうにないので、昨今GOKIBURIに有効と言われる「キキュット」中性洗剤の泡タイプを試してみることにした。
苔の上でモゾモゾ、なんだか気持ち良さそうなところ、ちょっと申し訳ないが シュッと毛虫に泡を乗せた。
すると、あっという間に動かなくなったのである。
ここ毎日10匹ほどのペースで子供と一緒に駆除している。
不思議と昔のトラウマが少し安らいでいる気がする。見慣れたからか、有効な対策に出会ったからか。ただし、まだ桜の木の下は首を守らずには歩けないままである。